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MoS2トランジスタの性能向上技術を開発―2次元材料MoS2と層状Sb2Te3の低コンタクト抵抗実現:産業技術総合研究所ほか

(2023年2月10日発表)

 (国)産業技術総合研究所と東京都立大学の共同研究グループは2月10日、次世代トランジスタのチャンネル用半導体材料として注目されている「二硫化モリブデン(MoS2)」を用いたMoS2トランジスタの性能向上に大きく貢献する技術を開発したと発表した。厚みが原子レベルの2次元材料から成る次世代トランジスタの開発促進が期待されるという。

 開発したのは、コンタクト抵抗とも呼ばれる接触界面抵抗の低減技術。

 MoS2は2次元状の結晶構造から成る遷移金属ダイカルコゲナイト(TMDC)と呼ばれる物質の一つで、次世代素子材料として有望視されているが、一般的な金属電極との接触面のコンタクト抵抗が高く、これがトランジスタ高性能化の妨げになっていた。

 今回研究グループはMoS2上に層状物質の三テルル化アンチモン(Sb2Te3)を成膜し、結合力の弱いファンデルワールス力によって層状結晶同士が結び付くファンデルワールス界面を作り出すことに成功、トランジスタのコンタクト抵抗を大幅に低減させた。

 Sb2Te3は熱安定性が高く、作製したMoS2トランジスタは半導体製造工程に対して十分な耐熱性を示すことが期待できるという。

 今回の新技術は、MoS2トランジスタにおけるコンタクト抵抗の課題を根本的に解決できる可能性を秘めており、次世代のロジック半導体(演算素子)として期待される2次元材料トランジスタの高性能化に大きく貢献するとしている。