窒素酸化物から有用なアンモニアを合成―カーボンフリー燃料入手に新たな道:産業技術総合研究所
(2023年1月31日発表)
(国)産業技術総合研究所は1月31日、燃焼廃ガスなどに含まれる窒素酸化物(NOx)から有用なアンモニアを選択的に合成できる触媒を開発しアンモニア合成を実証したと発表した。200~300℃の温度域の模擬廃ガスに含まれる酸化窒素(NO)を常圧のもとで80%程度をアンモニアに変換することに成功した。廃ガス中のNOxを有効利用するための明るい成果と産総研は見ており、この触媒のさらなる高性能化を進めている。
排出ゴミや窒素成分を多く含む物質を焼却すると発生する二酸化窒素(NO₂)は光化学スモッグや酸性雨の原因物質であることから産総研は、廃ガス中のNOx分をアンモニアに変えて利用する研究に取り組んでいる。
今回の成果はその一環で得た。
アンモニアは、肥料やナイロンの製造をはじめ幅広い分野で使われている重要な化学原料物質で、さらに燃焼させても二酸化炭素(CO₂)を排出しないことから近年は“カーボンフリー燃料”の候補の一つとして世界的に脚光を浴びている。
だが、工業的なアンモニア合成法としては、20世紀の初頭に開発された有名な「ハーバー・ボッシュ法」が今も使われ200~400気圧、400~600℃という高圧・高温を要している。
今回の成果は、それを1気圧(常圧)にまで下げ、処理温度も燃焼施設などから放出されている廃ガスの温度域とされる200~300℃にもっていけることを示したわけで、産総研がさきに発表している「メソポーラス・アルミナ(mAl₂O₃)」と呼ぶnm(ナノメートル,1nmは100万の1mm)オーダーの均一な微細孔を持つ多孔質アルミナを使って2種類の新規触媒を開発して実現した。
2種類共貴金属の白金が多孔質アルミナに含まれていてNOxを吸蔵する働きを持つバリウム(Ba)、カルシウム(Ca)と複合化している。分子式は、「Ba/Pt/mAl₂O₃」と「Ca/Pt/ mAl₂O₃」。
実証実験は、触媒にNOを0.1%含むモデルガスと、そのNOを還元する水素を1%含んだガスの2種類を300℃・常圧の下でそれぞれ別々に1時間ずつ交互に流通させてNOのどれだけがアンモニアになるかを評価する方法で行われ、両触媒共最大約80%のアンモニア化率が得られたという。
研究グループは、実験条件を変えることでアンモニア化率はもっとアップできると見ており、既に「90%に向上することを確認している」といっている。