「クシクラゲ」で新たなたんぱく質見つける―水中マイクロマシンなどへの応用期待:筑波大学
(2022年10月24日発表)
筑波大学生命環境系下田臨海実験センターの稲葉一男教授らは10月24日、虹色(くれないいろ)に輝くことから水族館などで人気になっている「クシクラゲ」から新たなたんぱく質を見つけ「CTENO189(テノ189)」と命名したと発表した。クシクラゲは、クラゲと名はつくが、クラゲではない全く別の系統の海洋生物。最も祖先的な動物の一群と見られていて、人間の気管と同じ構造の無数の繊毛(せんもう)を持っていることからヒト繊毛病の理解や、水中マイクロマシンなどへの応用が期待されている。今回の発見でクシクラゲの泳ぎの機構が分かったという。
クシクラゲは、無色透明なゼラチン質(寒天質)の動物。紅色に見えるのは、自らが発光しているのでなく、光の反射で輝く「櫛板(くしいた)」という機構を持っているからで、体長は10cm程度。
世界には、150種類ほど生息していて、体の表面には数万本の微細な繊毛が櫛(くし)のように並んだ板状の櫛板の列があり、その板をパタパタと波打つことで水流が発生し水中を移動している。
研究グループは、その櫛板に注目し櫛板を構成しているたんぱく質データの解析などを進め2019年に第一弾として特徴的なたんぱく質「CTENO64(テノ64)」を先ず見つけた。
しかし、そのたんぱく質は、櫛のように並ぶ板状の櫛板のそれぞれ根元の部分にしか存在しないことが分かった。
そこで、引き続き研究を進め今回新たに分子量189,000のたんぱく質がテノ64の存在しない櫛板の先端の領域に存在していることを発見、これを「テノ189」と命名した。
テノ64と今回発見したテノ189とは、それぞれ存在している領域が異なり重なることのない明瞭な境界が見られた。
さらに、両たんぱく質の働きは、テノ64が櫛板内の個々の繊毛の方向を決めているのに対し、テノ189は水の流れを一方向に効率良く起こすというそれぞれ異なった役割を持っていることが分かり、クシクラゲの泳ぎを支える櫛板の二段構造をはじめて解明することができたといっている。