小惑星リュウグウの石の元素を非破壊で分析―最も始原的といわれる隕石の組成に似る:高エネルギー加速器研究機構ほか
(2022年9月23日発表)
高エネルギー加速器研究機構、日本原子力研究開発機構などから成る小惑星リュウグウの石の「ミュオン分析チーム」は9月23日、素粒子ミュオンを用い、非破壊でリュウグウの石の元素分析に成功したと発表した。これまで最も始原的と言われていた隕石の組成に近かったが、酸素の含有量は少なかったという。
2014年に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」は、小惑星リュウグウから採取した試料5.4gを2020年12月に地球に持ち帰った。国内外の研究者で組織する初期分析のプロジェクトチームは翌2021年6月から分析を開始、「ミュオン分析チーム」は石の物質分析を担当するチームのもとで作業を進めていた。
ミュオンによる元素分析は、加速器から放出される素粒子ミュオンを試料に打ち込み、飛び出してくるX線を捉えて元素を分析する手法。茨城県東海村にある大型加速器施設J-PARCにおいて世界に先駆け開発してきた手法で、分析の難しい生命の材料である炭素や窒素、酸素などの軽い元素を非破壊で定量することができる。
分析の結果、リュウグウの石の元素組成は、太陽系の固体物質の化学組成の基準となっているCIコンドライトという種類の隕石とおおむね似た組成をしていることが分かった。これは、リュウグウの石が太陽系において極めて始原的な物質であることを示している。
また、酸素の含有量がCIコンドライト隕石と比べ約25%少ないことが明らかになった。これは、太陽系の化学組成の基準とされていたCIコンドライトが、地球大気圏に突入してきたことによって地球物質の汚染を受けていた可能性を示唆しており、CIコンドライトよりもリュウグウの石の方が、太陽系を代表する物質として相応しい可能性があるという。
今回、貴重なリュウグウの石を損なうことなく非破壊で元素分析できたことは画期的な成果であり、今後の小惑星・衛星探査で得られる試料の分析手法の一つとして確立が期待されるとしている。