PETの原料物質などが嫌気性環境で分解すること発見―分解を担う微生物由来の酵素を見出す:産業技術総合研究所
(2022年7月11日発表)
(国)産業技術総合研究所は7月11日、PETのモノマーや原料物質の分解が、酸素のない嫌気性の環境で生じることを解明し、分解を担う微生物由来の酵素を明らかにしたと発表した。嫌気性生物による廃プラスチック類の除去技術の開発が期待されるとしている。
環境中に排出されたプラスチックは酸素の乏しい地中に埋められたり、あるいは、分解した小片が流出して低酸素の海底に蓄積したりする。こうした嫌気性環境でのプラスチック類の分解挙動についてはこれまで不明な点が多く、挙動に関する知見が求められていた。
産総研は代表的なプラスチックの一つであるPETを取り上げ、PETが嫌気性環境へ流出した際の動態解明を目指して、PETのモノマーBHET(テレフタル酸ビス(2-ヒドロキシエチル))やPET原料である難分解性物質DMT(テレフタル酸ジメチル)の分解を調べた。
実験では、原料製造廃水の処理炉から得た汚泥を嫌気性環境を模した培養瓶に入れ、BHETまたはDMTを加えて微生物を集積培養した。
培養瓶内の代謝産物を測定したところ、BHETとDMTの分解が生じていることが確認され、嫌気性環境においてもBHETとDMTが微生物で分解を受けることが明らかになった。
培養物中に加えたBHETとDMTを顕微鏡観察したところ、BHET、DMTの結晶に特異的に付着するスパイラル状の微生物を発見、これらの微生物が分解に関与していることが示唆された。
さらに、培養物に含まれる複合微生物群のDNAを解析した結果、BHETとDMTを分解する可能性がある酵素が確認されたという。
これらの成果は、嫌気性生物による廃プラスチック類の除去技術の開発やプラスチック類で汚染された自然環境の浄化につながるもので、今後はBHETやDMTだけでなく、ポリマーであるPETそのものや、その他のプラスチック類の嫌気性環境における分解性の評価を進めたいとしている。