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温暖化で頻発する「大気の川」と、未曾有(みぞう)の豪雨(ごうう)との関連を解明―台風が少ない春季の豪雨被害の約9割を占めると推定:筑波大学ほか

(2022年1月18日発表)

 筑波大学生命環境系の釜江 陽一(かまえ よういち)助教と気象庁気象研究所の川瀬宏明主任研究官のグループは1月18日、「大気の川」と呼ばれる大規模な水蒸気の流れ込み現象が日本をはじめ東アジアで頻発しており、経験したことのない豪雨につながることを高解像度の気候モデルで解明したと発表した。同じ場所に豪雨が数日間停滞し、起こる激甚(げきじん)災害の対策に貢献するとみている。

 「大気の川」は熱帯から中緯度帯へと水蒸気が川のように流れ込む現象で、1,500km以上の長さを持つ。陸上に流れ込むと豪雨や土砂災害をもたらす。

 アメリカ西海岸やヨーロッパでは、上陸によって豪雨を引き起こすことが注目されたものの、地球温暖化との関連研究は進んでいなかった。

 研究グループは、これまで過去60年間の気象データから「大気の川」の振る舞いを拾い出し、降雨強度と比較することで東アジア一帯の豪雨の発生頻度と強度を解明してきた。

 気象研究所などが作成した「大気大循環モデル」を使って、温暖化が進んだ時の地球全体の気候変化を予測した。さらに20km四方の精度で現象を捉えることのできる高解像度の地域気候モデルを使い、「大気の川」によって発生する豪雨が、今後の温暖化でどのように変化するかを明らかにした。

 日本各地の各月の降雨強度の中から上位0.1%に相当する雨を「豪雨」と定義し、その発生頻度を現在の気候と将来の温暖化時とで比較した。日本で温暖化が進行し現在より気温が4℃上昇すると、豪雨の発生頻度が高まり、春には約3.1倍に、夏には約2.4倍に増えるとの予測が得られた。

 標高の高い山地の南西斜面に水蒸気の流れがぶつかると強い雨の頻度が増える。そのうちの77%が「大気の川」によって引き起こされるとの予測が出た。日本アルプスの上空を水蒸気の流れが通過すると、これまで経験したことのない大雨が発生し、その大部分が「大気の川」の通過時に生じるとの予測が出た。

 台風の接近の少ない春季に起こる大雨では、「大気の川」による割合が約89%にものぼった。

 近年は、「大気の川」と「台風」「線状降水帯」が同時に関わるような極端現象の発生も増えている。日本の国土のどこに、いつ、どの程度続くような豪雨が起きるかが予測できれば、激甚化する豪雨の防災対策に役立つと期待されている。