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廃棄PETボトル分解に新触媒―常温・高収率で再原料化:産業技術総合研究所

(2021年11月8日発表)

 (国)産業技術総合研究所は11月8日、PETボトルなどに使われている樹脂を常温で効率よく分解、再び樹脂の高純度原料として90%以上の収率で回収できる触媒技術を開発したと発表した。廃棄PETボトルの再原料化にはこれまで200℃以上の高温が必要で、省エネ・低コスト化が大きな課題だった。大幅な省エネ・低コスト化が見込める新技術の実現で、PETボトルのリサイクルが促進されると期待している。

 産総研が開発した技術では、PETボトルなどに広く使われている樹脂「ポリエチレンテレフタレート(PET)」をフレーク状に粉砕した後、メタノール、炭酸ジメチルとアルカリ触媒のリチウムメトキシドと適切な比率で混合する。こうして室温で3時間程度処理すると樹脂の90%以上が、また反応温度を50℃に上げるとすべてが分解できた。この反応で得られる生成物「テレフタル酸ジメチル」はろ過や濃縮、水による洗浄といった簡単な精製法で99%以上の高純度で単離でき、新たなPET原料として再利用できる。

 さらに、この反応で使用したアルカリ触媒のリチウムメトキシドは、反応後に不要物として沈殿するため、ろ過することで容易に分離・回収できる。また、反応過程で高収率で得られる副生物「炭酸エチレン」は、高効率蓄電池として注目されているリチウムイオン電池の電解液など高付加価値製品として利用でき、単なるリサイクル以上の付加価値を生むことも可能という。

 PET樹脂の化学的なリサイクル技術には、これまで100℃程度の比較的低温で処理できるアルカリ触媒を用いる方法もあったが、反応時間が長いことや環境負荷の大きいハロゲン溶媒が必要などの課題があった。

 産総研は今後、新技術の実用化を目指して触媒の改良を進めるとともに、さまざまなPET製品への適用可能性を検討、さらにPET樹脂以外のプラスチック材料をリサイクルするための触媒開発を進める。