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褐色細胞腫4人に1人が遺伝性―日本初の大規模調査で判明:筑波大学

(2021年9月27日発表)

 筑波大学は9月27日、腎臓のすぐ上の副腎などにできる褐色細胞腫・パラガングリオーマ(PPGL)の患者の3人に1人が生まれつき発症の原因となる遺伝子変異を持っていると発表した。日本人患者370人を対象にした遺伝子検査の結果から初めて明らかにした。褐色細胞腫の早期発見・早期治療につながるという。

 褐色細胞腫・パラガングリオーマは副腎のほか交感神経や副交感神経に沿って存在する傍神経節で発生し、肺や骨などに遠隔転移することもあるため潜在的な悪性腫瘍とされている。欧米では遺伝性が高いとされていたが、日本人を対象にした本格的な調査研究はこれまでなかった。

 そこで筑波大医学医療系の竹越一博教授らは今回、日本人の褐色細胞腫患者370人を対象に遺伝子検査などを実施した。その結果、患者の3人に1人(32.4%)が発症原因となる遺伝子変異を生まれつき持っていた。また、家族の中に発症者がいなかったり随伴症状がみられなかったりして一見すると遺伝性の疑いがない患者に限定しても、4人に1人に遺伝子変異があることが分かった。遺伝子検査では発症に関連するとされる7つの遺伝子について調べたが、特定の遺伝子の変異が転移性の褐色細胞腫と特に関連が深いことなども明らかになった。

 これらの結果から、患者の遺伝子変異の有無を調べれば手術後に遠隔転移するリスクが把握でき適切な術後管理につながるという。また、患者の血縁者で未発症の人に対しても、遺伝子検査が早期発見・早期治療につながる可能性があるという。