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大型肉食恐竜の新種を発見―ウズベキスタンの化石から:筑波大学ほか

(2021年9月6日発表)

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ウルグベグサウルス・ウズベキスタネンシス(奥)の復元画(Julius T. Csotonyi画)
同じ地層から産出するティラノサウロイディア類のティムレンギア(手前)よりもずっと大型の肉食恐竜であることが分かる。

 筑波大学と北海道大学は9月6日、共同で中央アジア・ウズベキスタン共和国の博物館が所蔵している恐竜の化石が大型肉食恐竜の新種であることを発見したと発表した。ウズベキスタンの地層で見つかって保存されてきた約9,000万年前の恐竜の化石を調べたところ「カルカロドントサウルス」と呼ばれる大型肉食恐竜の新種であることを突き止めたもので、「ウルグベグサウルス・ウズベキスタネンシス」と名付けたという。

 カルカロドントサウルスは、代表的な大型肉食恐竜として知られる。最大のものは全長が13mにも達し、北米では後期白亜紀の中頃(約9,600万年から9,400万年前)まで生態系ピラミッドの頂点に君臨していた。

 しかし、北半球からはやがて姿を消し、代わって最後の巨大肉食恐竜と呼ばれている大型のティラノサウルスが君臨するようになる。

 このカルカロドントサウルスとティラノサウルスとの間で起こった頂点争いがどのようなものだったかは世界的に注目されているが、交代劇が起こっただろう時代の化石が見つかっているのが世界的に少なく、これまでの研究は証拠がある程度見つかっている北米地域に限定されている。

 そこで研究グループはウズベキスタン中央部の砂漠に後期白亜紀の「ビセクティ層」と呼ばれる地層が露出していて、これまでにそこから多様な恐竜化石が見つかっていることに注目。同国タシケント市の博物館が所蔵するビセクティ層から発見された恐竜の顎(あご)から鼻にかけての上顎骨(じょうがくこつ)の化石の調査に取り組んだ。

 その結果、長さ約24cm、高さ同13 cmの上顎骨から、しわ模様、こぶのような隆起、など固有の特徴が4つ確認されカルカロドントサウルスの新種であることが分かった、体のサイズが分かっている既存の近縁種との比較から、この新種の全長は7.5mから8m、体重は1t以上あったと推定している。

 今回の新種が見つかった地層からは過去にティラノサウルスの仲間の化石が発見されており、カルカロドントサウルス類とティラノサウルス類とが共存していたという証拠がアジアで初めて見つかったことになる。

 ウズベキスタンの恐竜研究はまだ限定的なことから「今後も大きな発見が期待できる」と研究グループは見ており、同国の研究機関と共同研究を進めていく計画にしている。