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尿路結石形成の仕組み解明へ―たんぱく質の分布可視化:大阪大学/国立科学博物館ほか

(2021年8月26日発表)

 大阪大学、国立科学博物館などの研究グループは8月26日、発症すると強烈な痛みに襲われる尿路結石ができる仕組みの解明につながる技術を開発したと発表した。結石の形成に深く関わる3種類のたんぱく質の結石内の分布を1,000分の1ミリ単位で可視化できるようにした。これまで手術で取り除くしかなかった結石を、溶かして除去する新しい治療法の開発などに役立つという。

 尿路結石は90%以上が無機成分で、残りの0.1~10%程度が100種類以上のたんぱく質などの有機成分とされている。10人に一人が発症するといわれているが、結石が尿路内でどのように形成されるかは解明されておらず、有効な予防法は普段から多量の水を飲むしかないとされていた。 

 阪大と科博のほか名古屋市立大学、京都府立大学、東北大学で構成する研究グループは今回、結石の形成に深く関わる3種類のたんぱく質が結石中でどう分布しているかを1,000分の1mm単位で可視化することに成功した。

 鉱物学や岩石学で使われる技術を応用、結石を100分の2~3mmにまで薄片化した。そのうえで、特定のたんぱく質に結合する抗体を用いて薄片断面を蛍光染色し、顕微鏡で3種類のたんぱく質が結石内部でどのように分布しているかを直接観察できるようにした。その結果、結石の形成過程における各たんぱく質の働きを詳しく分析できるようになるという。 

 これまでにも、何らかのたんぱく質が結石の形成を促進する可能性が示唆されていたが、多種類のたんぱく質が結石内部にどう分布しているかを調べる方法がなく、結石の形成過程で各たんぱく質がどのように働くかは解明されていなかった。

 研究グループは、今回の成果で「各たんぱく質が尿路結石形成に与える影響を詳しく議論することができるようになった」として、将来的には尿路結石の新しい予防法や、これまで不可能と考えられていた結石溶解療法の開発にもつながると期待している。