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西アフリカの主食作物ギニアヤムの起源を解明―サバンナと熱帯雨林の野生種の雑種が起源:京都大学/国際農林水産業研究センターほか

(2020年12月18日発表)

 京都大学農学研究科の寺内良平教授と(公財)岩手生物工学研究センター(IBRC)、(国)国際農林水産業研究センター(JIRCAS)などの研究グループは、西アフリカ地域の主食である根菜作物の「ギニアヤム」の全遺伝子情報(ゲノム)を解読し、ギニアヤムの起源がサバンナ地帯と熱帯雨林の野生種の雑種であることを突き止めたと12月18日発表した。このゲノム情報をもとに野生種を交配親として使い、病気やストレスに強く、収量増につながるギニアヤムを開発し、西アフリカの食料事情の改善に貢献したいとしている。ナイジェリア国際農業研究センター、国際熱帯農業研究所、東京農業大学、総合研究大学院大学との共同研究となった。

 ギニアヤムは、日本で栽培されているナガイモや自然薯などの仲間で、ヤマイモ属の作物。ナイジェリア、ガーナ、ベニンなど西アフリカではこれを栽培し、主食にしている。

 茹でたあと臼と杵でモチのようについて食べる。伝統的な調理法や加工技術など食文化に裏打ちされた重要な作物になっている。だがウイルス病や線虫に弱く、乾燥への耐性や収量増加が求められていた。

 ギニアヤムは開花後にしか雌雄が判別できないため品種改良が難しかったが、品種改良にも新しい道をひらいた。

 グループは西アフリカの食料安定確保のために研究を重ね、2017年にギニアヤムの全ゲノム配列を解読した。ナイジェリアの国際熱帯農業研究所の研究者が西アフリカで採取したギニアヤム系統300種類の葉からDNAを抽出し、次世代DNAシーケンサーで読み取った。

 得られたゲノム配列を近縁野生種2種のゲノム配列と比較したところ、ギニアヤムはサバンナ地帯に生育する野生種アビシニカヤマノイモを母親に、熱帯雨林地帯の野生種プラエヘンシリスヤマノイモを父親にした雑種起源である可能性が高くなった。

 ギニアヤムに対して、野生種から何度か自然交雑で遺伝子が導入されたゲノム配列上の痕跡もみつけている。

 これまでの交配育種ではギニアヤム栽培種だけが使われてきたが、今回の成果によって熱帯雨林の野生種を勾配親として積極的に利用する必要のあることが分かった。野生種の故郷の熱帯雨林が伐採によって減少しているため、環境の保全について国際的に認識を高めることも欠かせない。

 耐病性やストレス耐性、収量増加などに活かすことができるようになり、西アフリカの食料安全保障に寄与できるとみている。