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放射光のマルチビーム化に成功―ミリ秒X線CT実現へ:東北大学/東京学芸大学/筑波大学ほか

(2020年5月13日発表)

 東北大学、筑波大学などの研究グループは5月13日、ミリ秒(1,000分の1)単位で変化する試料内部の動きを3D(三次元)映像化するX線CTの実現にメドをつけたと発表した。強力なX線源である放射光のマルチビーム化に初めて成功、試料を回転させずに3D映像化に必要な同時・多方向からのX線照射を可能にした。流動性のある試料や生物内部の動きがそのまま観察できるようになるため、さまざまな分野への応用が期待できるという。

 体の内部の構造を立体的に画像化できるX線CTは医療診断用として広く使われよく知られている。ただ、数秒から数十秒かけてさまざまな角度から体にX線を照射する必要があり、動きのある画像をそのまま撮ることは難しかった。

 これに対し、強力なX線を同時に多方向から試料に照射して短時間で透過画像が得られれば、試料を回転させずに内部の動きをそのまま見られる。そこで東北大、筑波大のほか東京学芸大学、(財)高輝度光科学研究センターが参加した研究グループは、ミリ秒単位で透過画像を得ることができる強力なX線源である放射光のマルチビーム化に取り組んだ。

 実験では、放射光を透過させることで、その方向をわずかに曲げられる薄い単結晶を何枚も作成。これらを双曲面上に配置して、1本の放射光ビームから進行方向が少しずつ異なる何本ものビームを作る光学系を開発した。この結果、試料を回転させなくても同時に多方向から試料にX線が照射できるようになった。強力なX線である放射光を使っているため透過画像はミリ秒単位で得られ、試料内部の動きをそのまま3D映像化できる仕組みだ。