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漆器の名品「玉虫塗」を強くする方法を開発―プロ野球の楽天イーグルスがヘルメットに使う:産業技術総合研究所ほか

(2020年1月24日発表)

玉虫塗ナノコンポジットを付与したヘルメット
(提供:産業技術総合研究所)

 (国)産業技術総合研究所は124日、(有)東北工芸製作所などと共同で漆器(しっき)の一種「玉虫塗(たまむしぬり)」の表面を強くすることができる粘土含有ナノコンポジットを開発、それを使い強くした玉虫塗で表面をコーティングしたヘルメットがプロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルス(楽天イーグルス)の選手用に2020年のシーズンから採用されることが決まったと発表した。

 漆を塗り重ねて作る漆器は国際的に高く評価されている工芸品だが、市場が縮小傾向にありその再興が問題となっている。今回の研究は、漆器の名品玉虫塗の表面にこの新材料を保護層としてコートすることでより傷の付き難い高耐久性の漆器を作れるようにした。

 玉虫塗は、昆虫の玉虫の羽根に似た鮮やかな色調と光沢を持った漆器として知られる。1932年(昭和7年)に経済産業省の前身の商工省の国立工芸指導所が開発したもので、仙台市を代表する工芸品の一つに数えられ、これまでにもさらに表面を強くしようと保護層を付ける試みはあった。

 しかし、紫外線をあてるプロセスが必要だったり、複雑な形状の製品への適用が難しいなど色々と難点があった。

 開発した粘土含有ナノコンポジットは、水ガラスなどを原料にした無色透明な粒径1100㎚(ナノメートル、1㎚は10億分の1m)オーダーの合成スメクタイトと呼ばれる合成粘土を使って作った。これをウレタン樹脂と均一に混合すると樹脂と無機粒子のネットワーク構造が形成されて高硬度で透明度の高い保護層が得られた。スプレーで複雑な形状にも対応できる。ウレタン樹脂を硬化させるのに紫外線照射は使わない。 

 楽天イーグルスの野球ヘルメットへの採用は、(株)楽天野球団から楽天イーグルスの地元である仙台の玉虫塗を表面コーティングに応用できないものかとの提案があって今回の保護層をつけた玉虫塗を使い実現したもので、ヘルメットは5カ月間にわたる屋外での太陽光暴露試験で色あせないことを確認しているという。