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ホルモン受容体APJによる血管収縮機構明らかに―2種類の受容体の機能的な協調作用が重要な役割:筑波大学

(2019年10月24日発表)

 筑波大学の研究グループは10月24日、血管平滑筋にホルモン受容体APJを過剰に作るマウス「SMA-APJマウス」を開発し、その機能を調べたところ、APJとアドレナリン受容体との協調作用で血管が収縮することを見出したと発表した。血管内皮細胞のAPJは血管を拡張し血圧を下げることが知られているが、血管平滑筋細胞のAPJには血管を収縮する作用があることが明らかになった。

 ホルモン受容体APJは、血管組織の内皮細胞と平滑筋細胞の両方に発現し、内皮細胞のAPJは血管を拡張する作用が知られている。一方で、APJには血管を収縮する作用もあることが示唆されてきたが、詳細は明らかでなかった。

 研究グループは今回、血管平滑筋細胞でAPJ遺伝子を過剰発現するSMA-APJマウスを作製し、APJの血管収縮作用を調査した。

 その結果、受容体APJに特異的に結合する生理活性物質アペリンで刺激すると、SMA-APJマウスの血圧が上昇すること、アペリン刺激がSMA-APJマウスの血管を収縮させること、APJはα1Aアドレナリン受容体との同時刺激で単離血管を強力に収縮すること、を見出した。

 また、ホルモン受容体APJとα1Aアドレナリン受容体が二量体を形成することを突き止め、これまで知られていなかった、APJとα1Aアドレナリン受容体による血管平滑筋の収縮機構を発見した。これにより、APJによる血管収縮には両受容体の機能的な協調作用が重要であることが明らかになった。

 血管平滑筋の著しい収縮は血管の狭窄(きょうさく)を引き起こし、虚血性心疾患や脳梗塞などのリスクを高める。このため、今回開発したSMA-APJマウスは、正常な血管収縮性制御や血管狭窄の発症メカニズムを探るための有用なツールになることが期待されるとしている。