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動脈狭窄(きょうさく)を引き起こす新生内膜形成のメカニズムにメス―動脈硬化症など血管疾患の治療に新たな可能性:筑波大学ほか

(2021年4月22日発表)

 筑波大学と熊本大学の共同研究グループは4月22日、動脈硬化の原因に関わっている新生内膜形成という現象が生じるメカニズムの一端を解明したと発表した。動脈硬化をはじめとした血管疾患の治療の新たなターゲットになることが期待されるという。

 冠動脈の狭窄(きょうさく)や頸動脈(けいどうみゃく)狭窄、あるいはステント治療後の再狭窄では、血管の内側の層が厚くなる新生内膜形成を伴うことが分かっており、これまでの研究で、その形成には血管中膜に存在する細胞が関与していることが知られている。しかし、新生内膜形成に関わる細胞の詳しい性質は明らかになっていなかった。

 研究グループは今回、新生内膜形成のメカニズム解明を目指して血管壁に存在する細胞の挙動を追跡し、新生内膜形成に関わる細胞の動態の一端を解明した。

 血管壁を構成する細胞では、血小板由来成長因子受容体アルファ(PDGFRa)という膜たんぱく質が発現している。そこで、PDGFRaを発現する細胞を蛍光たんぱく質で標識できるマウスを用いて、病状の異なる3種類の血管障害モデルを作製し、標識細胞が新生内膜形成にどのように関わるかを追跡した。

 その結果、血管損傷の程度によって新生内膜を構成する細胞の種類が異なること、また、PDGFRa陽性細胞の血管障害に対する応答性が異なることを見出した。さらに、新生内膜形成に、PDGFRa陽性細胞由来の細胞が重要な役割を担うことも分かった。

 今後は、PDGFRa陽性細胞がどのような血管壁の損傷刺激に応答して細胞増殖、分化、移動を起こし、新生内膜の形成に関与するのか、その分子メカニズムを解明し、新生内膜の形成を効率よく阻害する治療法の開発などにつなげていきたいとしている。