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「カエルの合唱」数式で再現―無線ネットの性能向上に応用も:筑波大学ほか

(2019年1月7日発表)

オスのニホンアマガエル。喉にある大きな袋を膨張・収縮させて鳴き声を発する。
©筑波大学

 筑波大学と大阪大学は1月7日、春の繁殖期になると聞かれる「カエルの合唱」に潜む法則性を数式で再現した数理モデルを作成したと発表した。多数のセンサーからなる無線センサーネットワークの自律分散型制御にこの数理モデルを応用、ネットワーク全体の通信性能向上や低消費電力化を実現できる見通しを得た。

 作成したのは、筑波大の合原一究助教、阪大の村田正幸教授らの研究グループ。

 カエルの合唱で大きく鳴くのはメスに自分の存在を知らせるオスだけで、しかもオス同士は鳴くタイミングを互いに調節していることが知られている。今回の研究ではその法則性を調べるために、別々のかごに入れた3匹のニホンアマガエルを50㎝間隔で直線状に並べ、その鳴き方を解析した。その結果、長い時間スケールで見ると「鳴いているタイミングをそろえる」という性質があることを見出だした。

 この結果をもとに、研究グループは「個々のカエルは鳴くたびにエネルギーを失い、疲労度が増す」という仮説を立て、疲労度や周囲で鳴くオスの有無によって鳴いている状態と鳴かずにエネルギー消費を節約している状態が確率的に切り替わるという数理モデルを作成した。このモデルに従ってコンピューターで数値シミュレーションをしたところ、カエルの合唱が定性的に再現できたという。

 そこで、この数理モデルを100台のセンサーをつないだ無線センサーネットワークの自律分散型制御への応用を試みた。個々のセンサーがカエルと同様に周囲のセンサーの稼働状況を独自に判断、自分を独自に制御する技術だ。実験の結果、近接するセンサー同士が同時にデータを送るとその受け渡しに失敗するという「パケット衝突」を避けながら、全体として通信と休止の状態を一斉に切り替えられることが分かった。

 これらの結果から、近くにいる仲間と鳴くタイミングをずらしたり合唱の合間に休憩したりするニホンアマガエルの行動は、無線センサーネットワークの通信性能の向上や消費電力の低減に役立てられると期待している。