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核分裂で大きさが異なる核ができる謎を解明―分裂時に洋ナシ型の原子核が出現:筑波大学

(2018年12月20日発表)

 筑波大学は1220日、ウランやプルトニウムの核分裂の際に、キセノン元素あるいはキセノン元素に近い質量の原子核が大量に作られる理由を解明したと発表した。

 核物質の分裂反応では、大きさがほぼ等しい2つの原子核に分かれる対称核分裂と、大きさが少し異なる原子核ができる非対称核分裂がある。このうち、エネルギー的に必ずしも得をしない非対称核分裂が起こる理由は解明されておらず、これまで核分裂の謎とされてきた。

 筑波大の研究者はオーストラリア国立大学と共同でこの解明に取り組み、時間依存密度汎関数理論という、原子核の構造・反応の量子ダイナミクスを記述する理論と、超伝導のBCS理論とを組み合わせ、原子核が分裂する様子をスーパーコンピュータでシミュレーションし、核分裂がどのように進行しているかを調べた。

 その結果、キセノンなどを大量に生み出す非対称核分裂では、核分裂時に洋ナシ型(瓢箪(ひょうたん)型)に変形した原子核が出現することが分かった。1つの原子核が2つに分裂する際、分裂の相手側に引っ張られて洋ナシのような形が自然に作り出される。この時にエネルギー的に得をするのが、キセノンやバリウムなどの原子核で、そのためこれらの核種が分裂片として生成される。

 原子番号54のキセノンを中心とした原子番号5256あたりの原子核が大量に生み出されるのは、このようなメカニズムによることが数値計算の解析で示されたという。また、分裂片の持つ運動エネルギーなどについても実験データと解析結果がよく一致したという。

 核分裂現象のミクロな機構を解き明かす今回のような研究は、今後、宇宙における重い元素の生成過程の謎の解明などにつながる可能性があるとしている。