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カメムシの一斉ふ化のナゾ解明―卵の割れる振動が促進:京都大学/森林総合研究所

(2018年12月13日発表)

 京都大学と(国)森林研究・整備機構森林総合研究所は1213日、悪臭を放つことで知られる昆虫「カメムシ」の卵のふ化にまつわるナゾを解明したと発表した。一カ所にかためて産まれた卵塊の中で、最初にふ化した卵が割れる際の振動が他の卵のふ化を促進する現象を実験で確認した。先にふ化した子にふ化前の卵が共食いされるのを避けるための仕組みと考えられるとしている。

 研究対象にしたのは、カメムシの一種で国内に広く生息するクサギカメムシ。果樹や豆類の害虫で、冬季には人家に入り込んで悪臭を放つ衛生害虫でもある。産卵時に葉の表面に卵塊として産み付けられた30個程度の卵は1015分ほどの短い間に一斉にふ化するが、なぜそうした現象が起きるのかについてはよく分かっていなかった。

 そこで研究グループは、最初にふ化を始めた卵が割れたときの振動が何らかの形で他の卵に伝わっているのではないかという点に着目。隣接した二つの卵を使って、一方の卵が割れたときに発生する振動がもう一つの卵にどのように伝わるかを、レーザドップラ振動計で記録した。

 その結果、0.003秒という非常に短いパルス状の振動が隣接する卵に伝わっていることが分かった。さらに、同様のパルス状振動を人工的に再現してふ化前の卵に与えたところ、それらの卵が15分以内にふ化する割合が増加した。これらの実験から、卵が割れる振動には他の卵に速やかなふ化を促す効果があると結論付けた。

 クサギカメムシは、日本を含む東アジアで農業害虫・衛生害虫として問題視されてきたが、近年は欧州や北米にも進出して深刻な被害をもたらしている。そのため「今回の研究成果が新たな防除方法開発の基礎となることを期待したい」と、研究グループは話している。