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謎の多い希少動物「珍渦虫(ちんうずむし)」の新種を発見―世界で6種目、動物の起源や進化の過程探る糸口に:筑波大学ほか

(2017年12月18日発表)

三浦半島沖で採取された珍渦虫 Xenoturbella japonica。体長は5㎝程度である。写真の左側が前方であり、右側が後方。中央をベルト状に横断する線があるのが珍渦虫の特徴。
(撮影:大森紹仁 新潟大学)

 筑波大学などは1218日、謎の多い希少動物「珍渦虫」の新種を日本の近海で採取したと発表した。珍渦虫は、これまでに全世界で5種しか見つかっておらず、今回6種目を発見したことになる。 

 見つけたのは、筑波大生命環境系の中野裕昭准教授と同大学下田臨海実験センター、国立遺伝学研究所、北海道大学、沖縄科学技術大学院大学、東京大学の研究グループで、動物の起源や進化の過程を探る糸口になる新知見が得られるのではないかと期待されている。

 珍渦虫の体長は、1~20cm強程度、非常に単純な形をした希少な動物で、頭も手足も無ければ眼や触覚などの感覚器官も持っていない。だが、その「のっぺらぼう」の単純な体は、多くの動物の共通祖先の特徴を残している可能性があると見られ、珍渦虫の研究をすることが、現在生きている動物の起源や進化過程の解明につながるのではと期待されている。

 しかし、珍渦虫が他のどの動物と近縁なのかはまだ分かっておらず、クラゲなどに近い原始的な動物であるという説と、人を含む脊索動物(せきさくどうぶつ:背骨を持つ動物)に比較的近縁であるという説とがあり、どちらが正しいか解明されていない。

 こうしたこともあり、最初の珍渦虫が採取されてから長い時間経っているのに研究はまだあまり進んでいない。

 1種目はスウェーデンの水深100m前後の海底に生息する種で、現在も標本が残っている最古の採集例は1878年。以来ずっとそれに続く種が発見されずにきたため世界には他の種の珍渦虫がいないのかと不思議がられてきた。2016年になってほぼ140年ぶりに米国・メキシコ西海岸の東太平洋で4種が見つかるが、どれも水深数百m以深の海底に生息するため採取するのに無人潜水機を要し、採れる個体数が非常に少なく研究に使うのが困難だったという。

 そうした中で今回の2個体は発見されたもので、1個体目を採取したのは、2013年の7月で、東北沖の水深517560mの海底。それに続く2個体目を採取したのは、神奈川県の三浦半島沖水深380554mの海底で201512月のこと。共に無人潜水機は使わずカゴのような器具を船から下し海底を引きずる方法によって採取した。

 研究グループは、2個体の内部構造をマイクロCTスキャンによって非破壊で調べたところ、消化器官、神経系、筋肉などの基本的な構造はこれまで知られている5種の珍渦虫とよく似ていたが、DNA(デオキシリボ核酸)の塩基配列解析の結果が2個体とも従来種と異なり新種であることが判明、2個体同種である可能性が高いことが分かった、としている。

 日本の近海には、今回の珍渦虫を採取した環境と同様の場所が他にもあることから研究グループは今後も探索を続け日本近海の珍渦虫の生息状況を明らかにする予定という。