(独)物質・材料研究機構は9月25日、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)、九州大学、(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)、日本電子(株)と共同で、これまでより分解能を大幅に向上させた透過型電子顕微鏡の開発に成功したと発表した。従来とは原理的に異なる「超電導遷移端センサー」と呼ばれるX線検出器を使うことで、これまで分離不可能だった多くのX線の重なり(多重ピーク)を分離し、ほぼ全元素からのピークを分離できるようにした。 この開発は、文部科学省のリーディングプロジェクト「次世代の電子顕微鏡要素技術開発」として行われたもので、ナノテクノロジー・材料やバイオテクノロジーなどの研究開発の大きな戦力になると期待される。 物質に電子線を当て、透過した電子で結像するタイプの電子顕微鏡が透過型電子顕微鏡。走査型電子顕微鏡は物質表面の情報しか得られないが、透過型電子顕微鏡は物質内部の微細構造や原子配列などを直接観察することができる。 中でも1nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)以下のサブnmスケールの高い分解能での直接観察が可能なのが「エネルギー分散型X線分光分析(EDS)」という組成分析の手法を取り入れた透過型電子顕微鏡。電子線を試料に当てるとX線が出る。その放出されたX線のエネルギーを分析して電子線を照射した領域の元素組成などを解析するのがEDS。このEDS検出器を付与した透過型電子顕微鏡は、ナノテクノロジー・材料、バイオテクノロジーといった先端研究分野に欠かせないツールとなっている。 しかし、これまでのEDSで使われてきた半導体製のX線検出器は、エネルギー分解能が低く、異なる元素から出ているそれぞれの近接したX線ピークが重なってしまう弱点を持っていた。 今回の成果は、EDSのX線検出器に、これまでとは異なる検出原理の超電導体を用いた超電導遷移端センサーを使い、従来の半導体製X線検出器では分離が不可能だった多くの多重ピークを分離できるようにし、高精度な組成分析を可能にした。 詳しくはこちら |  |
開発した透過型電子顕微鏡システム(提供:物質・材料研究機構)(a):透過型電子顕微鏡、(b):マイクロカロリメータ検出器、(c) (d):冷凍機、(e)EDS |
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