つくば市上空の大気中CO2量を発表
:国立環境研究所/神戸大学

 (独)国立環境研究所は9月24日、神戸大学との共同研究で、つくば市(茨城)に設置した「高分解能フーリエ変換分光計」を用いた太陽からの光の分光観測で、アジアで初めてとなる大気中のCO2(二酸化炭素)存在量とその長期変動を求めたと発表した。
 同研究所では、地球温暖化研究棟(つくば市)に設置された高分解能フーリエ変換分光計を用いて太陽からの光スペクトルを定常的に観測している。フーリエ変換分光計は、干渉計によって得られる干渉光パターンを観測してスペクトルを調べる装置で、2001年に同研究棟の建設と同時に設置された。
 現在、同研究所では、高分解能フーリエ変換分光計を用いた温室効果ガスの観測ネットワーク(全炭素カラム量観測ネットワーク:TCCON)に加盟し、アジア唯一のTCCONサイトとして炭素循環の観測的研究を進めると共に、同研究所・環境省・宇宙航空研究開発機構の共同プロジェクトである温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(2009年1月23日打ち上げ)のデータ検証のための運用をしている。
 今回の研究では、高分解能フーリエ変換分光計を用いて観測された 2001年12月から2007年12月までの6年間のCO2吸収スペクトルの解析を行った。
 地上に設置された分光計により観測されるスペクトルは、大気圏外の太陽光スペクトルに地球大気分子による吸収スペクトルが加わり、さらに分光計の装置関数(分光計の分光感度特性)が合成されたものとなる。研究グループは、観測したスペクトルについて、フイッティングやリトリーバルと呼ばれる手法を用いて大気微量成分の季節変動などを調整し、つくば市上空のCO2のカラム平均体積混合比の時系列データを算出した。カラム平均体積混合比とは、地表面から上空までのカラム(鉛直の柱)の中に存在する乾燥空気全量に対する調査対象となる気体の比をいう。
 解析の結果、つくば市上空における季節変動振幅は8.0ppm(1ppmは100万分の1)、年増加率は2.2ppmであることを明らかにした。また、観測精度(基準値に対するバラツキの程度)も0.2%(1ppm程度)で、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」のデータ検証手法としても有効であることを示した。
 この研究成果は、9月23日発行の国際学術誌「Journal of Geophysical Research Atmospheres」に掲載された。

詳しくはこちら