(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7月3日、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」を使ってタンパク質結晶の生成実験を開始すると発表した。 同機構は、これまでもISS を利用して、品質の高いタンパク質結晶の生成に取り組んできた。これまでの宇宙実験で、難病の筋ジストロフィー治療薬やプラスチック分解酵素、バイオ燃料生産酵素につながるタンパク質の結晶を生成するなど、産業応用に結びつく成果が出始めている。 ISSの一部となる日本初の有人実験施設の「きぼう」は、昨年3月から取り付けが始まり、今年ですべての取り付けが完了する予定。同機構では、7月からいよいよ「きぼう」でタンパク質の結晶生成実験を開始する。 「きぼう」でのタンパク質結晶生成実験は、(1)文部科学省の大規模研究開発事業「ターゲットタンパク研究プログラム」(平成19年度から5カ年計画で実施中)と連携した学術研究や産業応用上重要なタンパク質、(2)環境・エネルギーや医療問題などへの貢献が期待されるタンパク質を結晶生成の対象とするほか、(3)タンパク質複合体など、地上では結晶化が難しいが、将来重要と見込まれるタンパク質の結晶生成技術の開発実証を行う。これらの実験は,産学官の協力で平成24年まで6回行う計画である。 また、「きぼう」での実験では、ロシア連邦宇宙局(FSA)やマレーシア宇宙庁と国際協力を行う。FSAがロシアの宇宙輸送手段で6回の打上げ・回収をする代わりに、同機構は「きぼう」でのタンパク質結晶生成実験の機会を提供する。マレーシア宇宙庁とは、アジア諸国との国際協力の一環として、6回の実験にタンパク質を搭載する計画。 第1回実験は、7月24日にISSに向け打ち上げられる予定のロシアの宇宙船(プログレス補給船)で、47種類のタンパク質とタンパク質結晶生成装置を「きぼう」に運び、結晶化を実施する。47種類の中には、ロシアからの10種類とマレーシアからの6種類が含まれている。これらのタンパク質は、10月11日に地球に戻る予定のロシアの宇宙船(ソユーズ宇宙船)で回収することになっている。 詳しくはこちら |  |
ISSに接続した「きぼう」の想像図(提供:宇宙航空研究機構) |
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