幅より厚さの方が高い微細配線を高速で形成する新技術を開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は6月29日、工業用インクジェットで描画しながらレーザー光を当てて加熱することにより、重ね塗りせずに幅より厚さの方が高い線幅10μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)以下の低抵抗配線を高速で形成する新技術の開発に成功したと発表した。
 この新技術で作成した線幅10μmの微細な銀配線の単位長さ当たりの抵抗は、レーザー照射無しの場合の10分の1以下で、数百μmの段差のある基板や表面が粗い基板にも描画できる。この手法を同研究所は、「レーザー援用インクジェット(LIJ)法」と呼び、更なる技術向上を目指す。
 工業用インクジェットは、電子部品の実装分野でマスク要らずの配線技術として期待されている。しかし、従来のやり方では、微細パターン描画の際、噴出するインク液滴のサイズ微細化のための粘度調整や基板の表面処理などが必要で、実用的には線幅30~50μm程度の描画が限界だった。それに、微細導体配線描画の場合は、液滴のサイズや濡れ広がりの関係から、抵抗を減らすために線を厚くするには重ね塗りする必要があり、それだけ作業能率が悪かった。
 そこで同研究所の研究陣は、レーザー照射による加熱に着目、単ノズル型ヘッドから噴出された直径25μm程度のインク液滴に炭酸ガスレーザーを照射して液滴の流動や溶媒の乾燥を促し、線幅約5~10μm、線厚約10μmの微細な銀配線をガラス基板上に直接描画することに成功した。線の厚さと幅の比(アスペクト比)は、1を超え、従来より250倍以上改善、噴出インク液滴径より幅が細い配線を工業用インクジェットで描けることを初めて示した。描画速度は、毎秒10mm以上。
 上記例の場合、単位長さ当たりの抵抗は、線幅10μmで従来の1cm当たり70Ω(オーム)から10分の1以下の6Ωに下がった。LIJ法では、レーザー加熱によって基板に達した液滴が瞬時に固化し、基板表面の粗さの影響を受けないからである。

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新開発の「LIJ法」の原理図(提供:産業技術総合研究所)