(独)農業・食品産業技術総合研究機構の食品総合研究所は4月27日、アステラス製薬(株)と共同で、微生物の「休眠」している遺伝子を目覚めさせる技術を開発、これを応用して放線菌から新しい抗生物質を分離することに成功したと発表した。
「休眠遺伝子」を目覚めさせて利用する技術の開発は、世界でも初めて。微生物からの新たな抗生物質の発見は、ここ10年来困難さを増しているだけに、窮状を打破する新たな方法として注目を集めそうだ。
微生物、とりわけ放線菌には、“眠った状態”の休眠遺伝子が予想をはるかに越えて多数存在することが分かってきた。
今回の研究では、土壌から分離した放線菌1068株の内、抗生物質を生産しない菌353株にリファンピシン耐性、またはストレプトマイシン耐性を持たせたところ、66株が抗生物質の生産力を獲得した。休眠遺伝子の約20%もが目覚めたことになる。
放線菌の抗生物質を作る遺伝子は、その大半が休眠状態にあるが、「宝の山」を開発できれば、第二の抗生物質黄金時代も夢ではないという。
最大の利点は、遺伝子工学手法によらず、特定の薬剤耐性を選択するという従来の育種手法を用いたシンプルな技術であり、産業界への普及と創出された有用微生物の実用化が容易な点にある。
この技術は、新物質の探索だけでなく、新しい微生物の育種にも活用でき、薬剤耐性を付与して抗生物質の生産力、酵素の生産力を著しく高めることにも既に成功している。
No.2009-17
2009年4月27日~2009年5月3日