従来の膜より1000倍も水を通す超高速分離膜を開発
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は4月27日、従来の膜より1,000倍も水を通す革新的な分離膜の開発に成功したと発表した。フェリチンというタンパク質を使い、内部に直径約2nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の水の流路が無数に形成された厚さが30~100nmの極薄の強い膜を実現したもので、水中の有機分子を高速でろ過できることから飲料水中のウイルスや着色成分の除去をはじめ、医療・環境・エネルギーなど幅広い分野への利用が期待される。同機構では、「迅速な人工透析法の確立に貢献するかも知れない」といっている。
 圧力をかけて分離を行う膜では、水の透過量が圧力に比例し、膜の厚みに反比例して多くなるため、薄くて丈夫な膜が求められている。また、水処理では、水を高速で透過させながら有害物質を除去しなければならないが、大きさが2nm以下の有機分子を高速で除去できるナノ分離膜の開発は非常に難しいとされている。
 新分離膜は、超極薄な上に、水に溶けている1.5nm程度の有機分子を市販のナノろ過膜や限外ろ過膜の約1,000倍というろ過速度で除去できるという。
 この膜は、0.2気圧という低い圧力差でも1時間に面積1m²当たり2,000ℓ以上の流束が得られることを確認しており、水処理に必要なエネルギーコストの大幅な低減が期待できる。
 膜の素材のタンパク質(フェリチン)のコストは、1m²当たり800円程度で、同機構は「家庭用の水処理膜のサイズは数百cm²で十分。タンパク質のコストは大きな問題にならない」と見ている。
 この研究成果は、4月26日発行の英国の科学誌「ネイチャー・テクノロジー」(電子版)に掲載された。

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新分離膜の断面の走査電子顕微鏡写真(提供:物質・材料研究機構)