光合成細菌が持つ集光機能物質の構造を世界で初めて解明
:物質・材料研究機構、関西学院大学、神戸市外国語大学、日本電子

 (独)物質・材料研究機構は4月28日、関西学院大学、神戸市外国語大学、日本電子(株)と共同で、クロロフィル(葉緑素)の一種である「バクテリオクロロフィルc」と呼ばれる分子が、実際の生体内でどのような構造になっているのかについて、その詳細を解明することに世界で初めて成功したと発表した。
 光合成機能を持つ緑色光合成細菌は、クロロフィル類を体内に持っており、細胞膜の内側にクロロゾームと呼ばれる独特の集光装置がある。
 そのクロロゾームは、内部にバクテリオクロロフィルを大量に含んでいる。バクテリオクロロフィルには、a型からg型まで7種類の異なる分子構造があり、いずれもマグネシウムを含み、クロロゾーム内では1個1個のバクテリオクロロフィル分子がばらばらでなく、100個位の分子が集まって積層構造を形成している。
 しかし、その積層構造が具体的にどのような構造なのかについては、これまで複数(6種類)の模型が提唱されていたものの、真相は解明されていなかった。
 今回の研究では、a型からg型までの内のc型のバクテリオクロロフィルc分子について固体NMR(固体核磁気共鳴=粉末などの固体試料に対する核磁気共鳴)などの手法を用いて詳しく調べた。
 その結果、これまで6種類提案されていた積層構造のうち、1種類に特定されることを実験により示すことができた。さらに、分子同士を結合させて積層構造を作る原因が、水分子とマグネシウムとの化学結合であることも明らかになった。
 今回の解明では、マグネシウムのNMR信号を観測できたことが決め手となった。マグネシウムの原子核は、20テラス(1テスラは1万ガウス)以上の強い磁場を用いなければ固体状態の信号の観測が難しいため、従来のNMR装置では観測ができなかった。今回、物・材機構の930メガ・ヘルツNMR(磁場強度は21テラス)装置など世界トップレベルの強磁場磁石を用いることにより、世界で初めてクロロフィル類におけるマグネシウム核(マグネシウムを中心に持つ分子構造)の観測に成功した。
 緑色光合成細菌は、光の少ないところでも成育するのが特徴。バクテリオクロロフィルの全容を解明できれば、日光が十分でない環境でも効率よく働く太陽電池を実現できるものと期待される。

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