（独）産業技術総合研究所は3月30日、蛍光灯下で働き、これまで効果の出にくかった紫外線の少ない室内や車内でも効果があり、しかも製造コストの安い「可視光反応型光触媒」を開発したと発表した。
　従来品のように高価な希少金属などを使わず、安価な酸化チタン、アパタイト（燐灰石）、鉄の組み合わせで低コストを実現した。繊維やプラスチック、紙などに使用可能で、色が黄ばんで見えないのも従来型と違う特徴。抗菌・防かび、脱臭、大気や水質の浄化、防汚などへの利用が期待される。
　光触媒は、光の照射で有害化学物質を水や二酸化炭素にまで分解できるので、有用な環境対策技術の一つといわれている。しかし、従来から使われている酸化チタンを主とする光触媒には紫外線が必要なので、紫外線の少ない室内では機能が十分に発揮されず、室内用途への応用は進んでいない。
　そこで、酸化タングステンと貴金属などを用いる可視光反応型光触媒が開発されたが、資源問題やコストだけでなく、接触するほぼ全ての有機物を分解してしまう性質から、繊維やプラスチック、紙などを基材に使うと、基材そのものが分解されてしまうのが問題だった。
　今回、同研究所は（独）科学技術振興機構の支援を得て、平成18年度から3年計画で繊維やプラスチックなどの有機材料にも使える可視光で働く光触媒の開発を進め、酸化チタン・アパタイト・鉄といった資源的に豊富な材料を常温でコストの安い湿式法で複合化することで可視光反応型光触媒の低コスト化を実現した。酸化チタン・アパタイト・鉄の比率を最適化することで人体に有害なアセトアルデヒドの分解性能が従来型と比較して蛍光灯下で5.9倍向上し、二酸化炭素と水にまで完全に分解することを確認した。
　この新型光触媒は、表面が光触媒活性を持たないアパタイトで部分的に覆われているので、有機系基材の分解が抑えられ、繊維やプラスチック、紙などにも適用できる。喫煙室やトイレなど、紫外線の少ない場所での脱臭効果、黄色ブドウ球菌に対する抗菌効果、NOx（窒素酸化物）浄化効果も確認している。
　従来の可視光型光触媒は、水などに混ぜたスラリーの状態で1kg当たり10万円以上しているが、新開発の光触媒は同様の条件で数千円レベルで提供できる見通しという。