たんぱく質内を小分子が移動する様子を動画撮影することに成功:高エネルギー加速器研究機構/東京工業大学/横浜市立大学/名古屋大学

 高エネルギー加速器研究機構は2月9日、東京工業大学、横浜市立大学、名古屋大学と共同で、たんぱく質分子内を小分子が移動する様子を、動画撮影することに成功したと発表した。
 生体のたんぱく質の分子内を生命活動に不可欠な小分子が輸送される際に、たんぱく質分子自身が時々刻々と構造変形する様子を、「時間分解X線構造解析法」という方法を用いて直接観測することに世界で初めて成功したもので、たんぱく質・酵素の機能解析や、創薬などの基本であるたんぱく質の分子構造の概念に変更を加えていく重要な基礎研究成果として注目されている。
 たんぱく質の内側の構造を見ると、その中身は、アミノ酸でぎっしり詰まっているわけではなく、詰まっていない「穴」が所々開いており、数々の生命機能がこの穴の存在や形と深く関わっていることが明らかになってきたが、その動的観測は困難だった。
 研究では、生体筋肉の中で酸素分子を血液との間でやり取りしたり、一時的に貯蔵したりするたんぱく質「ミオグロビン」を試料にし、-130℃から-170℃程度の低温にした上で、レーザー光を照射、ミオグロビン分子内の酸素を貯蔵・放出する機能を持つ物質と一酸化炭素の結合を切断して、一酸化炭素が分子内でゆっくりと移動できるようにした。
 この状態を時間分解X線構造解析法で観測すると、分子内の穴の間を一酸化炭素分子が数十から数百分のオーダーで飛び移り、一連の穴の形状が時々刻々変形する様子が見られた。
 この研究成果は、米国の科学誌「米国科学アカデミー紀要」のオンライン速報版で2月9日公開された。

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