高効率マイクロ燃料電池モジュールの開発に成功
:産業技術総合研究所/日本特殊陶業

 (独)産業技術総合研究所は2月12日、日本特殊陶業㈱と共同で450~550ºCの低温領域で動作する高効率で小型の固体酸化物燃料電池(SOFC)の構成ユニットとなるマイクロ燃料電池モジュールの開発に成功したと発表した。同研究所は、さらに集積化やモジュール構造の最適化を進めて性能実証試験を行い、耐衝撃性があり、急速な起動・停止が出来る小型電子機器用のポータブル電源として実用化することを目指す。
 燃料と酸素の化学反応から直接電気を取り出す燃料電池には幾つかのタイプがあるが、SOFCはエネルギー変換効率が最も高く、全てを固体材料で構成出来るので信頼性があり、炭化水素系燃料の使用も可能という優れた特徴を持つ。
 しかし、これまでのSOFCは、動作温度が800~900ºCと高温なため、用途が大型・定置用電源に限られていた。
 このため、低温作動が可能で小型・可搬型電源に利用できるSOFCの実現が強く望まれ、500~600ºCまで動作温度は下がってきたものの、一般的なセラミックリアクター(反応器)の構造である平板型では急速起動・停止の際の熱歪みが障害となっていた。
 同研究所と日本特殊陶業は、チューブ構造のリアクターセルとその集積技術を開発し、電気出力が数百WからkW級のシステムの研究を進めてきたが、その成果を生かし数~数十W級の小型システム用モジュールを狙った。
 今回、研究陣は、リアクターとなる直径0.8mmのセラミックスチューブ5本を縦横1cm、厚さ2mmの多孔質構造体の中に平らに並べたものを単位とし、これを3セット直列に接続してモジュールとした。多孔質構造体の内部構造と配列の最適化で、空気供給動力の最小化と熱バランスの制御か容易になり、自然拡散による空気供給でも高性能を発揮する。動作温度450~550ºCで1cm3当たり0.88~2.2Wの発電電力密度を得ており、このモジュールを必要に応じて積層すれば数十W級のSOFCを構築できるという。

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新開発の高効率マイクロ燃料電池モジュール(提供:産業技術総合研究所)