日中共同でカイコのゲノムの塩基配列をほぼ完全に解読
:農業生物資源研究所/西南大学(中国)

 (独)農業生物資源研究所は2月10日、中国の西南大学(重慶)との共同研究で、カイコゲノム(カイコの全遺伝情報)の塩基配列をほぼ完全に解読することに成功したと発表した。
 同研究所と西南大学は、それぞれ独自にカイコゲノムの解読を進めてきたが、実用的な利用を目指して2006年3月にカイコゲノム情報の統合について合意し、その後共同で高精度なカイコゲノムの解読を進めてきた。今回の解読は、両研究機関が独自に解読したカイコゲノムの塩基配列情報を、東京大学が開発したコンピュータープログラムを用いてつなぎ合わせたことにより達成された。
 この日中共同研究で、カイコゲノム(約5億塩基対)の塩基配列の解析を行い、全塩基配列の91%に相当する塩基配列を高精度に解析することに成功した。
 今回解析したカイコのゲノム情報から、カイコの遺伝子数は1万6329個と推定された。また、カイコの特徴的性質として、絹糸のもととなるタンパク質を合成する遺伝子の働きや、桑に含まれる毒素に対する抵抗性を獲得するための遺伝子の働きなどが明らかになり、カイコが環境に適応するようにゲノムを進化させてきたと考えられている。
 研究成果は、2月10日に発行された専門誌「Insect Biochemistry and Molecular Biology」の「カイコゲノム特集号」の巻頭論文として掲載された。
 また、同研究所では、今回得られた高精度のカイコゲノム情報を、ホームページで「KAIKObase」(http://sgp.dna.affrc.go.jp/KAIKObase/)として公開し、国内外の研究者が利用できる体制を整備した。
 カイコが属する鱗翅目(りんしもく)昆虫は、農作物の最大の害虫で、カイコはその代表的な種とされている。このため、カイコゲノム塩基配列情報の公開は、遺伝子組み換えカイコによる医療用タンパク質などの有用物質や新機能絹糸の生産技術の開発に役立つだけでなく、新しい農薬の開発などにも貢献するものと期待されている。

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