超軽量の中空炭素微粒子を作る新技術を開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は2月9日、木材から製紙原料のパルプを製造する際に大量に副生する「リグニン」から超軽量の中空炭素微粒子を作る新技術を開発したと発表した。
 日本では、年間700万tにも上るリグニンが発生しているが、そのほとんどが焼却処分されている。
 新技術は、リグニンと塩化ナトリウム(食塩)などの無機塩を複合化し、600~800ºCで熱分解して直径が数nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)から数十μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)の弾力性に富んだ中空状の超軽量炭素微粒子を製造するというもの。同研究所では、「カーボンブラックの代替としてゴムやプラスチックに使えば大幅な軽量化や特性の改善が期待できる」と言っている。
 従来からある炭素微粒子のカーボンブラックは、タイヤの補強材、顔料などとして世界で年間1000万t程度生産されているが、石油などの化石資源を1400ºC前後の高温で熱分解して作っている。
 一方、リグニンは、木材からバイオアルコールを大量生産する計画が世界的に進んでいることもあって今後発生量がさらに増える見通しにある。
 新技術で得られる中空の炭素微粒子は、使用する無機塩の種類や量によって1ℓあたり10g以下の超軽量になり、4,200気圧の高圧をかけても壊れず常圧に戻すと元の形に戻るほどの弾力性を持っていることを確認している。
 同研究所は、広範な利用が期待できると見て、ゴム補強剤のほか軽量充填材、柔軟性付与材、断熱素材、導電材料、静電防止材、吸着材、徐放材として用途開発を進めていくことにしている。

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新開発の中空炭素微粒子の走査型電子顕微鏡写真(提供:産業技術総合研究所)