難敵のシロアリ駆除に光明―「卵認識フェロモン」の成分を解明:農業・食品産業技術総合研究機構/岡山大学

 (独)農業・食品産業技術総合研究機構は12月24日、岡山大学の研究グループが、シロアリの「卵認識フェロモン」の主成分がセルロース分解酵素の一つであるβ-グルコシダーゼと抗菌タンパク質のリゾチームであることを世界で初めて突き止めたと発表した。この研究は、同機構生物系特定産業技術研究支援センターの委託研究課題「シロアリの卵運搬本能を利用した駆除技術の開発」(平成16~20年度)で行われた。
 研究グループはさらに、シロアリの卵に擬態して巣内に寄生する菌核菌「ターマイトボール」が、卵の形に擬態すると同時に、卵認識フェロモンであるβ-グルコシダーゼを生産して、化学的にも擬態していることを明らかにした。また、β-グルコシダーゼは、シロアリの卵と唾液にも含まれており、単体でも強力にシロアリの卵保護行動を誘発することも解明した。
 シロアリは、卵の形状とサイズ、それに卵の表面の化学物質により卵を認識している。シロアリの働きアリは、女王の産んだ卵を認識し、それを育室に運搬して山積みにし、毎日表面を舐めて抗菌物質を含む唾液でコーティングしている。この保護行動により、卵は乾燥と病気の感染から守られている。こうした卵運搬・保護行動を誘発する化学情報物質を「卵認識フェロモン」と呼ぶ。
 今回の研究成果は、菌類が昆虫の社会行動を化学的に操作することを世界で初めて明らかにしたもので、昆虫と微生物の多様な関係を理解する上で極めて重要な発見となった。
 さらに、β-グルコシダーゼとリゾチームを主成分とする人工フェロモンを用いて、疑似卵をシロアリの育室に運搬させることが可能となった。殺虫剤を含ませた疑似卵をシロアリ自らによって巣の中枢まで運搬させることにより、容易かつ効果的にコロニー全体を駆除することが可能になる。
 同機構では、この原理に基づいた疑似卵型駆除剤のカプセル化の技術開発を進め、3年位後の製品化を目指す。

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