「J-PARC」施設の運用を開始:J-PARCセンター

 高エネルギー加速器研究機構(KEK)と(独)日本原子力研究開発機構(JAEA)の共同運営組織であるJ-PARC(大強度陽子加速器施設)センターは12月23日、茨城県東海村のJAEA東海研究開発センター内に建設している「J-PARC」の中心施設の一つである物質・生命科学実験施設が同日から中性子・ミュオン(素粒子の一つ)ビームを利用した実験を開始したと発表した。第1期工事計画(今年度完工予定)で建設するJ-PARC施設の初の実験運用開始である。
 粒子線源と実験装置類の据え付け・調整を終え、同日から利用を開始したのは、超高分解能粉末回析装置、工学材料回析装置など7つの中性子実験装置と1つのミュオン実験装置。このうちの2つ(生命構造解析装置と材料構造解析装置)は、茨城県が整備した。
 J-PARCは、元は別々の提案だったJAEAの中性子科学研究計画と、KEKの大型ハドロン(重粒子)計画を共同プロジェクトとして統合、平成13年度に工費約1,500億円で着工した。計画では、初段加速用の「リニアック(線形加速器)」と2基の「シンクロトロン(円形加速器)」で光速近くまで加速した陽子(水素の原子核)を金属などの標的に衝突させて生じる反陽子、中性子、ミュオン、ニュートリノ(素粒子の一つ)などの粒子を利用、素粒子物理から生命科学まで、幅広い分野の最先端研究を行う。
 実験を行う主要施設として、第1期工事で物質・生命科学実験施設とハドロン(素粒子の一つ)実験施設、ニュートリノ実験施設を建設、第2期工事で核変換実験施設などが作られる。
 物質・生命科学実験施設には「3ギガ電子ボルト(30億電子ボルト)シンクロトロン」から、ハドロン実験施設とニュートリノ実験施設には「50ギガ電子ボルトシンクロトロン」から、また核変換実験施設には「リニアック」から、それぞれ加速した陽子ビームを供給して利用する。

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J-PARCの航空写真。写真中央部の細長い建物が運用を開始した物質・生命科学実験施設(提供:J-PARCセンター)