高脂血症薬がマウスの体内季節時計を動かすことを発見
:産業技術総合研究所/徳島大学

 (独)産業技術総合研究所は10月9日、徳島大学との共同研究で、人間の高脂血症治療薬「フィブレート」を混ぜた餌でマウスを飼育したところ、動物の冬眠時の生理に似た状態が現れることを発見したと発表した。これはフィブレートが動物の体内季節時計に影響を及ぼすことを示す。フィブレートがマウスの日周体内時計の”針”を進めるという昨春発表の発見に続く、動物の体内時計に関する分子レベルの研究成果である。
 研究者は最初、前回12時間均等だった昼夜の時間条件を変更。人工的に昼間18時間・夜間6時間、或いは昼間6時間・夜間18時間として、9週間飼育した。しかし、中間の2週間だけは連日昼夜12時間均等とし、0.5%フィブレート混合餌を与えた。その結果、日周体内時計の前進効果は昼間を長くした場合にだけ生じ、昼間が短い場合には現れないことが分かった。
 フィブレート混合餌で飼育していた期間、体温・脳波・筋電図を24時間測定したら、冬眠のような体温低下が見られ、脳が眠るノンレム睡眠が増加、睡眠時間が長くなった。しかし、この影響は、その後、通常食を5週間続けると無くなった。フィビレートは、肝臓細胞の特定遺伝子の機能発現スイッチをオンする核内受容体「PPARα」に結び着いて作用することが分かっている。
 またフィブレート投与で、摂食促進や肥満などに重要な働きをする物質「ニューロペプチドY(NPY)」が脳内で増加することも分かった。こうした現象は、冬眠する動物特有の現象で、人間のように冬眠しなくなった哺乳類にも、その分子メカニズムが残されている可能性を示唆している。このメカニズムを解明することで、日照時間が短くなると元気が無くなる冬季うつ病のような病気の新治療法開発に繋がると期待される。

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