(独)産業技術総合研究所は10月6日、最少10n(ナノ、1nは10億分の1)ℓの極微量の液体試料も高精度に分配して注ぐアレイスポッター(自動分注装置)を開発したと発表した。
液体試料の吐出口には、毛細管を使い、その間隔は自由に変えられる。多数の検体を調べる際、試料の取り扱いが難しく、迅速性に欠け、分注精度が低かった従来法に比べて格段に優れた仕事が素早くできるようになると期待されている。
最近、集団検診などで採取した多数検体の分析などの効率化、高速化のため、実験工程の自動化・ロボット化が進んでいるが、前処理装置や分析装置の進展ぶりに比べ、この両者を繋ぐ技術が未熟で、作業全体のパフォーマンスを落としている。
今回、その改善を狙った。アレイスポッターとは、タコ焼き器みたいに何行何列かに並んだマイクロプレートのウエル(井戸)に刻んだタコならぬ液体試料を分配・注ぎ込む装置である。
研究者は、外径360µm(マイクロメートル、1µmは100万分の1m)の8本の毛細管を液体試料の注ぎ口とし、その間隔を最大9mmから0.9mmまで調整できるようにし、市販の全てのマイクロプレートに対応できるようにした。
また、毛細管から液を送り出すポンプを使う送液系内部の残留空気を完全に除去することで、nℓレベルの高精度極微量分注を実現した。
従来の容量可変分注技術(ピペット・チップ式)では、最少分注量500nℓで、その時の相対誤差は5~8%(25~40nℓ)、固定容量技術(ピン式)では最小分注量は数nℓだが、相対誤差は数十%と大きい。これに対して新開発のアレイスポッターの最少分注量は10nℓ、相対誤差は20nℓで2.7%(0.54nℓ)。
この技術を使えば、個々の分析に必要な試料容量が最少となり、より多種の検査を繰り返し実施でき、それだけ精度の高い分析・診断が行えるようになる。
No.2008-39
2008年10月6日~2008年10月12日