(独)産業技術総合研究所は10月7日、かけた張力に応じて瞬間的・可逆的に色が変わる高分子膜を開発したと発表した。色の変化は、何度でも繰り返し起こすことができ、人間が引っ張る程度の小さな力で変わる。 これまで困難だった張力を簡便に可視化する張力センサーが実現でき、建築物などの構造体のストレスを検知するセンサーなどへの応用が期待される。 この高分子膜は、導電性のポリマー(高分子)として有名なポリアセチレンに置換基をつけた置換ポリアセチレンを使って実現した。 ポリアセチレンは、空気中で不安定という大きな欠点を持っている。これに対し、置換ポリアセチレンは、空気中でも安定で、溶液から製膜することができ、これまでにも熱や光によって色が変化する置換ポリアセチレン薄膜が同研究所で開発されている。 今回の高分子膜は、置換ポリアセチレンをクロロホルムに溶かし、伸縮性のある無色のシート(基板)上にスピンコート法という製膜法で作った。スピンコート法は、高速で回転する基板の上に溶液を垂らし、遠心力で溶液を膜状に延ばし溶媒をとばして薄膜化するという方法。 得られた置換ポリアセチレン薄膜は、黄色をしているが、シートごと延伸機にかけて延伸すると、薄膜の色が赤色に変わり、延伸するのを止め張力を取り除いて収縮させると再び元の黄色に戻る性質を持っていることが分かった。延伸、収縮を機械的にではなく人の手で素早く行っても色が瞬間的に変化し、延伸・収縮を繰り返すと黄色と赤色の間で繰り返し変色することが判明した。 さらに、原料中の置換基を変えたところ無色と黄色の間や、紫色と青色の間といった別の変色を示す置換ポリアセチレン薄膜が得られたという。これらの薄膜も張力により繰り返し瞬間的・可逆的に変色する。 詳しくはこちら |  |
開発した高分子膜の延伸前後の色の変わり具合(提供:産業技術総合研究所) |
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