(独)産業技術総合研究所は9月25日、生理活性物質の立体配座コード化に世界で初めて成功したと発表した。
生理活性物質とは、生物に対して活性を有する、すなわち生物に作用することで生物体に何らかの変化を誘起し得る物質のことをいう。
現在、遺伝子情報についてはゲノム解析(核酸塩基簡易コード)によって、また、タンパク質の機能発現についてはプロテオーム解析(アミノ酸簡易コード)によって、それぞれ簡易コード(アルファベットと数値の組み合わせによる記号体系)化されている。
一方、環境中に存在する生理活性物質、特に薬剤や膜タンパク質(生体膜を構成しているタンパク質)など複雑な構造を有する有機化学物質の分子構造を網羅的に解析するための簡易コードは実現していない。しかし、ポストゲノム創薬の観点から、生理活性物質の機能発現に関わる構造変化、それに続く代謝反応(生体内での反応による物質の変換)を、網羅的で簡便に解析できる手法の確立が求められている。
研究グループは、「赤外円二色性分光法」という手法を用いて環境中のキラル化学物質(2種類の鏡像関係の分子構造をとる物質)の解析を進め、キラル化学物質の分子構造体をアルファベットと数値を用いてコード化(立体配座コード化)できることを発見した。
立体配座コードは、薬事申請に必要なキラル合成医薬品の絶対配置を決定するための基盤ツールとして活用できるほか、抗体医薬(人が持っている免疫システムを活用した医薬品)を含む新薬や次世代設計・開発支援ツールとして応用が期待される。
同研究所では、11月26日より東京ビッグサイト(江東区有明)で開催される「全日本科学機器展in東京2008」で、立体配座コードを活用したキラル医薬品絶対配置決定法を披露する。
No.2008-37
2008年9月22日~2008年9月28日