BSEに罹った牛の臨床診断に道開く検査法を開発
:農業・食品産業技術総合研究所/北海道立畜産試験場

 (独)農業・食品産業技術総合研究所動物衛生研究所は9月22日、北海道立畜産試験場と共同で、BSE(牛海綿状脳症)に罹った牛の脳幹機能障害の特徴を電気的反応により検査する方法を開発したと発表した。
  BSEに感染した牛の脳では、変性した細胞と細かい空胞が多数見出され脳組織がスポンジ状になっている。脳に多く存在しているプリオン蛋白質の異常化が、BSEの原因と考えられるところから牛の「プリオン病」とも言われる。
 異常プリオン蛋白質は、牛の脳やせき髄など特定危険部位に蓄積されているが、これらの部位を牛が生きている状態で採取することは極めて困難で、BSEを牛の生前に診断する技術は確立されていない。このため、我が国でのBSE確定検査は、牛の死後の脳を使って行われている。
 今回の研究では、BSEプリオンを脳内に接種して実験的に作り出したBSE罹患牛で、耳から音の刺激を与えることによって、脳内で非常に短時間内に生じる微細な電気的変化「聴性脳幹誘発電位(BAEP)」(脳波の一種)を頭部の皮膚につけた針電極で捉えて波形を解析した。その結果、BSEの症状の進行に伴い脳幹の特定の部位におけるBAEP波形に特徴的な変化が起こることが分かった。BSEに罹った牛では、音の刺激を与えてからBAEP波のピークが検出されるまでの時間が遅くなり、BAEP波の電位低下も起こった。この結果は、BSEに特徴的な脳幹の病変を反映しているものと考えられる。
 研究成果は、9月24日から宮崎県で開催された日本獣医学会で発表された。この脳幹機能検査法は、まだ研究段階だが、初めてBSEの脳幹の機能障害の特徴を明らかにしたことにより、新しいBSE診断手法の開発につながるものと期待されている。

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