(独)産業技術総合研究所は9月11日、ライオン(株)と共同で植物油から副生する「粗グリセリン」を利用して生分解性に優れた界面活性剤を効率良く生産する技術を開発したと発表した。
バイオ燃料の一つとして植物油からのバイオディーゼル燃料の生産が世界的に増加、それに伴い副生する粗グリセリンの発生量も急増、粗グリセリン利用技術の開発が課題になっている。
今回の成果は、草花の花弁から分離した「キャンディダ属」と呼ぶ酵母を使い、粗グリセリンから糖を主成分とする界面活性剤を生産することに成功したもので、石油から界面活性剤を化学合成する手法に比べ、得られる生産物の純度が非常に高く不純分をほとんど含まないのが特徴。
生産効率も高く、通常の発酵プロセスの数~数十倍に相当する発酵液1ℓ当たり170g以上の界面活性剤を生産することができるという。
バイオディーゼル燃料の生産増に伴い世界のグリセリン生産量は、この5年余りで2倍近くにまでなっている。しかし、植物油の利用で副生する粗グリセリンは、利用する際に精製が不可欠な上、現在のところ用途が限られているのが実情。
酵母菌や納豆菌といった微生物が作り出す天然の高機能界面活性剤は、「バイオサーファクタント」と呼ばれ、石油由来の界面活性剤に比べ生分解性に優れ、少量で効果を発揮するなどの長所があると期待されている。産総研では、今後さらに新たな構造や特性を持つバイオサーファクタントの探索・開発を目指すことにしている。
No.2008-35
2008年9月8日~2008年9月14日