(独)理化学研究所は9月9日、特定の遺伝子に「点突然変異」を持つモデルマウスを研究者にいつでも提供できる「点突然変異マウスライブラリー」を世界に先駆けて開発し、整備したと発表した。
点突然変異とは、DNA(デオキシリボ核酸)の塩基配列の内の1つの塩基を別の塩基に置き換える突然変異のこと。
ゲノム(全遺伝情報)機能の解明は、ノックアウトマウス法と呼ばれる手法によって飛躍的に進歩したが、この手法では遺伝子の詳細な機能の解明は困難であった。
理研の研究グループは、2000年からこの手法に代わる新しい方法(次世代ジーンターゲッティング法)として、ゲノムのDNAの塩基1つを様々な箇所で置き換え、より詳細な機能解析ができる点突然変異モデルマウスの作成を試みてきた。その結果、約1万匹の変異マウスを基盤に「点突然変異マウスライブラリー」の開発に成功し、ターゲット遺伝子内部の詳細な働きを1塩基レベルで解明するシステムを世界で初めて実現した。
ゲノム研究の世界では、1997年からモデルマウスを大規模に作製し、ゲノム機能を個体レベルで全遺伝子にわたって直接解明していく「大規模マウスミュータジェネシスプロジェクト」が国際的に進められている。理研が開発・整備した「点突然変異マウスライブラリー」は、これから国際的に大規模な展開が見込まれる「第3期マウスミュータジェネシスプロジェクト」の中核的なライブラリーになるものと注目されている。
将来は、生活習慣病や精神疾患など多因子疾患の原因解明にも貢献できるリソースになるものと期待される。
理研では、「点突然変異マウスライブラリー」の利用方法と共に、どういう遺伝子のスクリーンを進めているかについても、ホームページで公開している。アドレスは、http://www.brc.riken.jp/lab/mutants/genedriven.htm。
No.2008-35
2008年9月8日~2008年9月14日