針葉樹の完全長cDNAの大規模収集に成功
:森林総合研究所/理化学研究所

 (独)森林総合研究所は9月9日、(独)理化学研究所と共同で、スギの雄花の10,463種類の完全長cDNA(相補的デオキシリボ核酸)の機能を解明したと発表した。
 森林総研では、我が国で大きな社会問題になっているスギ花粉症の対策として、林業分野での花粉発生源を減少させるために、花粉アレルゲン(花粉症患者のアレルギー反応を引き起こす原因物質)の少ないスギの開発などを進めてきた。今後、遺伝子組換え技術を用いたスギ花粉症対策などの研究を行う上で、スギの雄花や花粉の発達過程で働く遺伝子の詳細な情報が必要となってきている。
 研究グループは、様々な発達段階のスギの雄花を材料として完全長cDNA(遺伝子に相当する塩基配列情報)のデータを集めライブラリーを作った。cDNAは、ゲノム(全遺伝情報)のDNAの中から不要な配列を除き、タンパク質の組み立てに必要な遺伝情報に整理された遺伝情報物質mRNA(メッセンジャーRNA:RNAはリボ核酸)を鋳型にして、人工的に作られたDNAのこと。断片化したcDNAと異なり、完全長cDNAは、タンパク質合成に必要な全ての情報を保持している。
 研究グループは、このライブラリーから約2万個の完全長cDNAを分離し、末端の塩基配列を解読、10,463種類の遺伝子の機能を明らかにした。
 完全長cDNAの大規模収集は、針葉樹では世界で初めてのことで、樹木ではポプラに次ぐ大規模な収集になった。この研究から得られたスギの遺伝子情報は、未知のスギ花粉アレルゲンの発見など今後のスギ花粉症対策や新たなスギ品種の開発などにつながるものと期待されている。
 収集した塩基配列情報は、森林総研が提供している森林生物遺伝子データベース(http://forestgen.ffpri.affrc.go.jp/ja/index.html) を通じて、誰でも自由に利用できる。

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