高エネルギー加速器研究機構は9月11日、ジュネーブ(スイス)郊外の欧州合同原子核研究機関(CERN)の地下100mに日米露などが協力して建設した世界最大の加速器「大型ハドロン衝突型加速器(LHC)」が完成し、10日午前(日本時間同日午後)、陽子(水素の原子核)ビームを使ってのファーストビーム周回テストに成功したと発表した。
LHCは、一周27kmの巨大な円形地下トンネル内で陽子を光速近くまで加速して衝突させ、宇宙のビッグバンの1兆分の1秒後に相当する超高エネルギー状態を作り出し、その際生まれる様々な粒子の様子を観測する実験装置。物質に質量を与えるとされる「ヒッグス粒子」の解明などが期待されている。
これまでに達成された最高の衝突エネルギーは、米国フェルミ国立加速器研究所の加速器で記録した2兆電子V(ボルト)だが、LHCはその7倍のエネルギーにまでもっていける。
LHCでは、粒子の反応を検出する4つの国際共同実験が行われるが、その1つで「ATLAS(アトラス)」と呼ばれる巨大測定器を使う実験グループには、日本から高エネルギー加速器研究機構、東京大学、神戸大学など15の研究機関から約100人の研究者、大学院生が参加し、ヒッグス粒子などの探索に挑む。
LHCでは、今後約2ヶ月かけて陽子ビームの加速試験と衝突の調整を行い、年内に10兆電子Vでの陽子ビーム同士の衝突実験を開始する。
No.2008-35
2008年9月8日~2008年9月14日