(独)物質・材料研究機構は7月10日、可視光が当たると周囲の有機汚染物質を効率良く分解してくれる新規の光触媒を開発したと発表した。
光触媒反応は、常温で太陽光のエネルギーのみで起こることから、環境問題解決の切り札として注目されている。しかし、光触媒材料として幅広く研究されている酸化チタンは、太陽光のわずか4%の紫外線でしか光触媒反応を起こさない根本的弱点を持っている。新光触媒は、太陽光のおよそ43%を占める可視光が利用できるというこれまでの壁を破るもので、室内照明でも触媒活性を示す。
新光触媒は、チタン酸ストロンチウム、ニオブ酸銀という2種類の酸化物を原料にして「酸化物固溶体合成法」と呼ばれる方法で合成した両酸化物の固溶体。固溶体とは、水とアルコールのように2つ以上の物質(元素や化合物)が相互に溶けあったもののことで、新触媒はチタン酸ストロンチウム25%、ニオブ酸銀75%からなり、分子式は「(Ag0.75Sr0.25)(Nb0.75Ti0.25)03」。
この新光触媒に波長400nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)以上の可視光を照射してアセトアルデヒドの分解を調べたところ、約100分の照射でほぼ100%がCO2(二酸化炭素)にまで分解し、50時間近くに及ぶ繰り返し試験でも分解性能が殆んど変わらず、安定性に優れていることが分かった。また、微弱な発光ダイオードの光でもイソプロピルアルコールなどの有機化合物をCO2に分解できることを確認している。
同機構は、室内向け環境浄化材料として実用段階にあると見て今後民間企業と共同開発を行っていくことにしている。
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