酸化チタン系より7倍も高活性な新光触媒を開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は7月9日、紫外線の少ない屋内や車内の可視光、蛍光灯の灯火の下でも、様々な難分解性の揮発性有機化合物を完全に酸化分解する活性を持つ酸化タングステン光触媒を開発したと発表した。この成功は、酸化タングステン光触媒にパラジウムあるいは銅化合物を助触媒として添加することで実現した。紫外線の少ない屋内や室内で、建材から放出される有機溶媒やシックハウス原因物質の分解、空気清浄機への応用など、広範な利用が期待される。
 酸化タングステンは、単独では活性が少なく、完全酸化分解出来ないので、これまで有害物分解に用いた例は少なかった。しかし、酸化タングステンには、460nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)までの可視光を吸収するなどの長所があることから、産総研はこの長所を生かせば有害物の実用レベルの完全酸化分解が可能と見て研究を進めてきた。酸化タングステンに種々の助触媒を添加した光触媒の完全酸化活性を調べた結果、白金とパラジウムと酸化銅だけが有機物の酸化分解活性を高めることが分かった。白金は、高価なので、実用を考え、パラジウムと銅の助触媒についてさらに調べた。
 その結果、アセトアルデヒドの場合、パラジウムを助触媒とする酸化タングステン光触媒は高い活性を維持、アセトアルデヒドを完全に酸化分解した。反応が半分進んだ時点で比べると、可視光反応型の酸化チタン光触媒より約7倍活性が高いことが分かった。
 酸化銅を助触媒としたものは、パラジウムを使ったものよりは活性は低いが、反応が半分進んだ時点での活性は約3倍だった。また、双方とも、シックハウス症候群の原因物質であるホルムアルデヒドを、ほぼ完全に酸化分解した。さらにトルエンなど芳香族化合物の完全酸化分解にも成功した。

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ガラス基板に塗布した新光触媒(提供:産業技術総合研究所)