鋳型なしRNA合成酵素の謎を解明:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は7月8日、細胞内でタンパク質が合成される際に「鋳型非依存性RNA(リボ核酸)合成酵素(CCA付加酵素)」が誤った配列を合成することを回避する分子機構の謎を解明したと発表した。
 細胞内でタンパク質が合成される際は、必要なアミノ酸を運ぶ役割をtRNA(転移リボ核酸)というヌクレオチド(核酸の構成要素。糖と塩基が結合した物質)が担っている。このtRNA鎖の大部分は、DNA(デオキシリボ核酸)を鋳型として合成されるが、tRNA鎖の末端部分だけは、CCA付加酵素という特別なRNA酵素によって合成される。
 DNAを鋳型とするtRNA鎖の大部分は、誤った合成を防ぐ校正機能を持っているが、鋳型を用いることなく定まった配列を合成できる鋳型非依存性のCCA付加酵素は間違ったものをRNAの末端に付加したときに、削除する校正機能を持っていないため、これまでCCA付加酵素の詳細な分子機構は謎とされてきた。
 鋳型非依存的なRNA合成酵素の研究をしている産総研は、一連のX線結晶構造解析によりCCA付加酵素の反応過程を解明し、2006年10月に発表している。今回は、誤った配列のtRNAが合成される確率を低くするCCA付加酵素の分子機構を解明するため、X線結晶構造解析や生化学的解析の手法を用いた研究を行った。
 その結果、CCA付加酵素による合成は3ステップで進むが、合成の最後のA(アデノシン)付加の段階になって初めてそれまで合成された配列を、酵素が確認するというユニークな機構であることが明らかになった。
 この研究成果により、今後、RNA合成酵素のデザイン開発が促進され、医療技術やバイオテクノロジー(生物工学)への応用が期待されている。

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