中性子でセラミックス微粒子の配向過程を直製観察することに成功:物質・材料研究機構/日本原子力研究開発機構

 (独)物質・材料研究機構と(独)日本原子力研究開発機構は3月18日、両機構が共同で行った原子力機構の研究用原子炉「JRR-3」を使っての中性子散乱実験で、溶媒中に分散した弱磁性のアルミナ(酸化アルニウム)微粒子が磁場によって配向する(微粒子の方向が揃う)過程を直接観測することに成功したと発表した。
 セラミックスの中でもアルミナ材料は、電気絶縁性や耐熱性などが優れているため広い用途に使われている。近年アルミナ材料の機能性を向上させる手段として、アルミナの微粒子を固める際に強磁場の環境下で結晶の向きを揃える配向技術が注目されているが、微粒子の配向過程が十分に解明されていなかった。
 今回、JRR-3に設置された多目的熱中性子ビームポート「武蔵」を用いて中性子散乱実験を行った。その結果、10テスラ(1テスラは1万ガウス)までの磁場下で、溶媒中に分散したアルミナ微粒子の配向する過程を観察することに成功した。この観測から、アルミナ微粒子を完全に配向させるためには 20テラス以上の強磁場が必要であることが判明した。
 中性子を用いて弱磁性のセラミックスの微粒子が配向する過程を直接観測したのは、これが初めて。また、X線や電子線に比較して高い物質透過性を持つ中性子線が、微粒子の配向過程を直接観測する手段として有用な方法であることも示した。今後、中性子によって様々な材料の微粒子の配向過程が解明されることが期待される。

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