土壌中の炭素の変動実態を解明:農業環境技術研究所

 (独)農業環境技術研究所は11月14日、全国の農地約2万地点のデータを解析し、水田、畑、樹園地など地目別の土壌炭素の変動実態を解明したと発表した。
 同研究所では、1979年から1998年にかけて全国の公立農業試験研究機関に依頼して、5年ごとに全国の主要な土壌を代表する2万地点(定点)の農地を対象に、土壌の理化学性の変化など土壌実態(分析)調査と、農家への土壌管理調査(アンケート調査)を行った。今回の研究成果は、その調査によるデータを解析して得られた。
 解析の結果、[1]農地の種類(地目)ごとの表層土壌の炭素含量は、水田・樹園地よりも普通畑で多いことが分かった。普通畑では、土壌の多くがもともと土壌炭素含有量の高い火山灰由来の黒ボク土(土壌有機物の集積による黒い表層を持つ土壌)が多いためである。[2]調査期間中の土壌炭素含量は、普通畑では減少する傾向が見られたが、水田ではほとんど変化がなかった。普通畑では、投入される堆肥などの有機物の量が少なくなっており、水田では湛水(たんすい=水を張ること)によって土壌有機物の分解が抑制されるためと考えられる。[3]樹園地では、土壌炭素含量が増加する傾向が見られた。これは耕す回数が少ないため、土壌有機物の分解が遅いことが主な原因と考えられる。
 今年5月に発表された、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告書では、農地土壌の炭素蓄積量の増加により地球温暖化緩和への貢献が可能であると指摘している。今回の解析では、農地の適切な管理により温暖化緩和に貢献できる可能性があることを示した。 

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