シロアリの卵認識フェロモンの同定に成功
:農業・食品産業技術総合研究機構/岡山大学

 (独)農業・食品産業技術総合研究機構は8月29日、シロアリの行動を強力にコントロールする卵認識フェロモンと呼ばれる化学物質が、細菌の細胞壁を分解するタンパク質のリゾチームであることを世界で初めて明らかにしたと発表した。
 この研究は、同機構の委託研究課題「シロアリの卵運搬本能を利用した駆除技術の開発」(平成16~20年度)の中で岡山大学大学院環境研究科が行った。
 シロアリの行動様式では、働きアリが女王の産んだ卵を認識して育室に運搬し、表面を舐めて世話をしている。卵は、こうした行動により乾燥と病気の感染から守られている。この卵運搬・保護行動を誘発する化学情報物質を「卵認識フェロモン」と呼んでいる。
 卵認識フェロモンは、シロアリに卵運搬行動を強く誘発させるため、野外試験でリゾチームを塗布したガラスビーズ製の擬似卵を、シロアリの巣の生殖中枢に運び込ませることができた。今回の研究により、この擬似卵に殺虫剤を塗布した上、シロアリの卵運搬本能を利用して生殖中枢に運び込ませることが可能となり、駆除にかかる労力の大幅な削減など画期的な新しいシロアリ駆除技術が開発できるものと期待されている。
 この研究では、卵がシロアリの女王の卵巣内にある段階でリゾチーム遺伝子が発現し、リゾチームが作られることも分かった。
 この研究成果は、8月29日付けで米国の科学雑誌「PLoS ONE」(オンライン版)に掲載された。

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