(独)産業技術総合研究所は8月31日、光で光を制御する新原理の超高速光半導体スイッチの開発に成功したと発表した。 この成果は、9月18日にドイツのベルリンで開かれる「欧州光通信会議(ECOC2007)」で発表する。
ブロードバンドの普及で情報通信量が急速に増大、更なる通信ネットワークの大容量化が求められている。しかし、1本の光ファイバーに信号を載せた複数波長の光を通す「波長分割多重方式」では毎秒100ギガ(1ギガは10億)ビット以上の超高速信号を処理出来る電子回路がないので、光信号を電気信号に変換することなく、光信号のまま多重化する「光時分割多重方式」が必要になり、光で光を制御出来る超高速光スイッチの実現が求められている。
同研究所は、超高速の全光スイッチング素子の開発を進める中で、(独)情報通信研究機構との共同研究で光による「光の位相変調効果」という新しい原理を発見した。光の非線形媒質に励起光を照射して物質の光の屈折率を制御出来れば、その物質を通る別の光の位相を制御出来る。屈折率が変化すると光が物質内を通過するのに要する時間が変わり、その結果、光の位相が変わるからである。
同研究所は、インジウム・ガリウム・ヒ素などの化合物半導体を積み重ねて純粋な光位相変調素子を実現、これにマッハツェンダ型と呼ばれる干渉計を組み合わせ、1ピコ(1ピコは1兆分の1)秒程度の超高速領域で、ほとんど無損失で光の位相を制御出来るスイッチモジュールを試作した。
同研究所では、この成果をもとに毎秒160ギガビットの信号を伝送する小型光トランシーバーを開発し、高精細画像を時間遅れなく送信することを目指している。
No.2007-34
2007年8月27日~2007年9月2日