新たな形状記憶合金を発見:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は12月1日、中国の西安交通大学と共同で「歪(ひずみ)ガラス合金」と呼ばれるチタン・ニッケル合金に形状記憶効果があることを発見したと発表した。

 変形してもある温度以上にすると元の形に回復する形状記憶合金は、携帯電話のアンテナを始め家電製品、医療機器などに広く使われている。しかし、歪ガラス合金には、これまで形状記憶効果(元の形に回復する性質)はないと見られていた。

 窓ガラスは、高温に曝すと流動性のある液体になる性質がある。歪ガラス合金は、それと同じような物性を持つ合金のことで、この合金に形状記憶効果があるのを見つけたのは世界でも初めてという。

 形状記憶効果が見つかった歪ガラス合金は、ニッケルを1.5%過剰に含むチタン・ニッケル合金。この合金の試料をマイナス135℃の低温下で大きく変形させた後、熱を加え温度をマイナス100℃まで上げたところ元の形にほぼ完全に戻ることが確認された。

 同機構では、「今回の発見によって数十年間信じられてきた形状記憶合金の必要条件が覆ったことになり、科学的な意味は大きい」とし、形状記憶合金の領域が大きく拡がるものと見ている。

 この成果は、12月1日発行の米国の物理誌「フィジカル・レビュー・レターズ」に掲載された。